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価格:¥ 2,415 ブランド:新潮社 発売日:2008-08 通常24時間以内に発送 大きい画像を表示 |
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これまでインドとアメリカに絞られていた物語の舞台が世界中に広がり、主人公たちはローマへ、タイへ、縦横無尽に旅していく。ジュンパ・ラヒリ、新境地。
空間が広がり、時間軸が後の世代まで押しひろげられたことはまちがいないが、作者が扱うテーマの基本はあまり変わっていないという印象を受けた。
父、母、子、あるいは周りの環境の変化がもたらす微妙な「ゆらぎ」を、ジュンパ・ラヒリは彼女独特の視点で見つめ、切りとってみせる。
主人公たちは変化に抵抗したり、無理に飲み下そうとしてその苦さに顔をしかめたりする。
それでもいつか、ひょっとするといつの間にか、変化した家族や環境が、「現実」そのものに変わる日がくる。
変化に向かい合ったヒトの対応は「受け容れる」「拒絶する」という二者択一の単純な文法で語れるものではない。その、本来は言葉にできない心のうごきを、ジュンパ・ラヒリは小説の形式を借りてすくいとろうとしているようにみえる。
印象的なのは、終盤の連作。へーマとカウシクというどこにでもいる、しかし世界のどこにもいないひと組の男女が主人公だ。
舞台も、主人公も文体も異なるふたつの物語が交差して、そこからまたもうひとつの物語がはじまる。
物語が生まれる瞬間を目撃することのできる、稀有な短編集だ。
短編集「停電の夜に (新潮文庫)」、そして長編「その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)」に続く、ジュンパ・ラヒリの最新作です。短編と連作中篇を集めた一冊で、今年(2007年)7月にフランク・オコナー賞を受賞したとのこと。
ジュンパ・ラヒリの作品は間違いない。そして継続して翻訳を担当してきた小川高義氏の筆遣いも間違いない。私のそうした期待と信頼を全く裏切らない仕上がり具合に、大いに満足しました。
ラヒリの作品ですからもちろん主人公の大半はベンガル系インド人のアメリカ移民二世となります。しかし、本書所収の最初の作品で表題作でもある「見知らぬ場所」は、その「ベンガル系インド人のアメリカ移民二世」の物語であることをことさら感じさせることなく読者をすっと物語世界へいざなっていきます。
妻を亡くした老父をひとり東海岸の街に残し、今は夫と子どもとともに西海岸の街に暮らす娘。核家族や世代間格差、高齢化社会、そして老親の再婚と、舞台が日本であってもさほど違和感のないテーマが散りばめられ、それを小川氏の巧みな翻訳の力によって日本語で読むことが可能になって、この作品は読者の前に普遍的な現代の物語として立ち現れてくるのです。
本書所収の物語たちが共通して持つのは、些細で平凡に見える人生に潜む小さな秘密です。
学校教育を経て社会に独り立ちした人間は、そこで初めて線路の敷かれていない人生を切り拓いていくことになります。教科書も参考書もない人生という海をどう泳いでいくか。
海原で人間が抱えるウソや隠し事は、時に浮き輪の役目を果たすこともあれば、重石となってしまうこともあります。
そんなウソや隠し事の割り切れない苦くも甘い味を、ラヒリの紡ぐ物語はたまらないほど見事に提示して見せてくれるのです。心がざわつかずにはいられません。
次回作が一日も早く読みたい。
ジュンパ・ラヒリは、今わたしに一番そう思わせる作家です。
彼女の作品を毎回心待ちにし、最新作の本著も原書で読みました。発売後、すぐにハードカバーで読みました。
大半が過去のニューヨーカー誌に掲載されていたから「読み返し」が多かったけれど、やっぱり彼女の創り出す独特の空気、言葉の並び、息遣い、全てが期待通り。
本作最後に収録されている作品は、特に印象的なラスト!
しかし前作とても良かった小川氏の翻訳にがっかり。前作はこれがそのまま日本語で書かれたのかと思う位、目にも心の耳にも馴染む翻訳だった。
しかし本著はどうだろう?
特にこの「がっかり」は物語の後半、つまりJhumpaが最もその作品に特別な息を吹きかけている(私は少なくともそう思います)部分で、ずっこけるというか、日本語がスムースに流れてゆかず、とても「つまづきながらラストシーンだ」という感じが否めません。
原書で読むのとは雲泥の差です。本当に彼女の作品が好きなら、絶対原書を読んでください。
私は翻訳版ではJhumpaの良さの半分も「感じられない」と思います。確かに翻訳だと、英語が読めなくても、「読めます」が、彼女の作品をしっかり感じることは出来ません。
ジュンパ・ラヒリはやはり短編(訳者によると中篇)の名手です。
「停電の夜に」でこの作家に魅了され、次の「その名にちなんで」も読みましたが、この三作目を読み終えた今、やはり短編が素晴らしい!と思います。
彼女の作品の登場人物は大抵がベンガル人で、コルカタからアメリカに移住した家族。マサチューセッツに住む知的階級の人々。そのパターンは一作目から変わらないけれど、今回は異文化の中で葛藤する第一世代から、アメリカ育ちの第二世代の物語に移っている。強い絆で結ばれていた若い家族が、年を経てそれぞれの世界を持ち、あるいはこの世を去り、互いに存在が希薄になっていく。家族とは人生の通過点にあって永遠ではない。どの家族にもある日常から心のひだを描き出す。ジュンパ・ラヒリのさらに成熟した世界に浸り、読み終えるのが惜しいと思う。
後半の「ヘーマとカウシク」は連作となっている。
幼なじみの二人が再会する「一生に一度」。母を失ったカウシクの物語の「年の暮れ」。そしてローマでの偶然の再会からふたりが恋人となり別れる「陸地へ」。
偶然の出会いと言い結末と言い、下手をするとお手軽になりがちなところだが、その静かで知的な語り口で違和感はない。「年の暮れ」の中でカウシクの母を恋う心が切なくて泣けた。長い間待ったこの三作目。期待通りの出来に満足しています。
最後に、翻訳である事を忘れさせるような小川高義氏の訳も良かったと思う。












