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文明の生態史観 (中公文庫)

文明の生態史観 (中公文庫) 価格:¥ 780 
ブランド:中央公論社
発売日:1998-01 通常24時間以内に発送

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カスタマーレビュー rank

ユーラシア諸文明のなかの新しい日本観を築いた古典 rank

本書は1950-1960年代に著者がアジア諸国を調査・旅行した経験を踏まえて、ユーラシア大陸における諸文明の見取り図を実証的・生態的に描いたものだ。著者は世界における日本の位置付けを熟考し、東洋・西洋という慣習的区分を乗りこえ、ユーラシア大陸を高度な近代産業文明の段階に達した第一地域、およびそうでない第二地域とに区分する。そして、日本をユーラシア東側における唯一の第一地域として、ユーラシア西側の西欧諸国と並行的に進化してきたのだという。第一地域はその特徴として、封建制の存在と早い時期からの市場経済の発達があげられ、第二地域はその特徴として、古くから文明が栄えて専制的帝国を築いたが、封建制を発達させることなく、絶えず遊牧民による破壊的圧力にさらされ続けたことがあげられる。

私自身の海外旅行の体験からいっても、例えば中国人とアラブ人の行動様式に多くの共通性があること、日本人と西欧人とに共通する資本主義・市場経済への適応度の高さ等、本書に納得できることは多い。また本書の図式によれば、日本人と中国人の文化的差異が、西欧人とアラブ人の違いに匹敵するほど大きいことになるが、これもよく納得できる。ただ、壮大な理論としては当然かも知れないが、複雑な世界をあまりに単純化していることや、日本人としての著者のプライドなのか、日本を過大評価する傾向が少々感じられる。しかしながら、本書は欧米先進国との比較ばかりだったそれ以前の日本論と違い、ユーラシア諸文明の中の日本文明という新しい視点を切り開いたことで、発表当時から大きな反響を呼んだことを納得することができた。

2007-07-17

「東洋=西洋」を崩した、新しい文明観 rank

単純な、「東洋=西洋」の文明観を否定し、筆者は間に「中洋」を設ける。
さらに、「西ヨーロッパ」と「日本」をそれぞれ1ブロックとして扱い、それを第1地域、残りを第2地域とする。
筆者の言うように、アジア地域よりも西ヨーロッパに、日本は多くの共通点を見出せる。

とりあえず、楕円で書かれたユーラシア大陸の区分図はすごいと思った。
左右の端っこに西ヨーロッパと日本、大陸を斜めに乾燥地帯が走って、中国、インド、ロシア、中東・地中海、の4ブロックに真中を分ける。
その後筆者は東南アジアと東ヨーロッパを導入するが、地図帳を見てみて、その正確な区分に驚いた。


本書は短編集のような構成で、軽く読めます。
生態史観以外にも、アジアの面白い風習や文化などもいろいろと書かれていて、そうしたところも楽しめる本です。

2007-05-24

未来を支える名論文 rank

固体とその発生地の環境条件との相互作用を考察する生態学的方法論をもとに、地球上の文明の比較がされていました。

地理的・時間的に広範に物事を見る想像力、事象を分析するための綿密な方法論、複数の学問領域を越える学際的研究など内容以外にも多いに学ぶことが多い好著です。本書には筆者の各種論文・公演が整理されているので、筆者の生態史観そのものの変遷(Succession)が見えます。

筆者の意図ではないにしろ、ダーウィンの「進化」論が西欧文明中心主義者を支えたように、生態学をもとにした筆者の文明の「変遷」論は今後の多極主義者の支えになる歴史的な意味をもつ論文なのではないでしょうか。

2007-03-24

大物のアプローチ rank

東洋と西洋という区分による、(旧大陸についての)常識的な世界像を覆すような試論です。著者はこの区分の変わりに、第一地域(=西ヨーロッパおよび日本)、第二地域(=その他の地域)という大胆な区分を提唱しています。著者のこうした括りの根底にあるのは、現在(1957年)で、高度な文明を持つのは西ヨーロッパと日本しかないという事実への認識です。これをベースに、ではなぜ第二地域では高度の文明が未発達なのか?第一地域と第二地域の根本的な差異は何なのか?いうことを、封建制が発達していたかどうかなどの社会構造の違いや、地域環境的条件の違いなどに求めていくわけです。アウトラインでしかないと著者も認めているとおり、弱い具体例から主観論で筆を滑らせがちですが、当時相当議論を巻き起こしたそうで、斬新な世界像だったことが伺われます。著者のこうした世界区別の妥当性については口を挟める分際ではないですが、一読して明らかなように、対象に対するアプローチの仕方が一般の学者とは違ってかなり大胆なように思いました。さまざまな資料はあくまで従で、まずは自分のあたまでモデルを構築し、それを主としているような感じです。また補助線の引き方によって世界などいろんな見方ができるものだなといまさらながら再認識させてくれるような本でした。単に内容だけでなく、その対象への迫り方などについてもいろいろと参考になる本なのではないかと思います(ついでですが、ひらがなが多く中学生でも抵抗なく読めるかも)。

2007-03-18

斬新な視点は認めるが rank

 評価は星三つだが一読の価値がないわけではない。文明を生態学の立場から捉え直すという発想自体はとても新鮮だ。文章も晦渋なところがなく、読んで有益なポイントも多いのでそういう意味では是非一読を勧めたい。
 ではなぜ星三つなのか。それはこの文明論における日本の位置である。最近の「歴史教科書」一派の本たちの中で、日本はとても誇大化されて(読み方によっては戯画的に見えるのだが)描かれている。ローマ帝国と大東亜共栄圏が同列に置かれたり、豊臣秀吉とフィリペ二世が比較されたり。それと同じ匂いを本書にも感ずるのだ。つまり、日本を称揚しヨーロッパと同等の位置に置くためにわざわざこの議論を考えたのではないか、と思われるふしがあるのだ。
 「ああ、やっぱり日本は素晴らしい」と感ずるので高得点なのかもしれないが、それはちょっと違うのではないだろうか。そもそも世界中の他の地域との違いで遅れている、進んでいる、というようなことを考えるのはやはり愚かなのではないか。

2005-10-03

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